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Sパラメータ
 ここでSパラメータについて簡単に説明します.図2のa1およびa2は回路への入力側および出力側からの入射電圧,b1およびb2はそれらの反射電圧を示します.
b1,b2はそれぞれ,以下の2-a),2-b)式で表わされます.

  b1 = S11×a1 + S12×a2 ・・・・・・・ 2-a)
  b2 = S21×a1 + S22×a2 ・・・・・・・ 2-b)


 ここで出力側を整合した場合,S11=b1/a1(a2=0)は"電圧反射係数",S21=b2/a1(a2=0)は入力側から出力側への"電圧透過係数",と覚えて下さい.例えば,回路が増幅器の場合,S21は電圧増幅率を表わします.またS22,S12は,入力側を整合した場合(a1=0)の出力側から見た電圧反射係数および電圧透過係数になります.

スミス・チャート
 図3はスミス・チャートです.スミス・チャートは通常,X-Y座標で表わすインピーダンスを極座標で表わします.極座標の中心が反射0,外周が反射1になり,この円の内側にすべてのインピーダンスを表示することができます.簡単に言えばX-Y座標の原点を固定し,X座標の+∞,Y座標の−j∞および+j∞をゴムのように伸ばしてくっつけ,右端に∞のインピーダンスを持ってきた図である,と覚えて下さい.こう考えれば,スミス・チャート上の抵抗,インダクタンス,キャパシタンスの変化を,X-Y座標表示の場合と対比しながら理解できるでしょう.
 スミス・チャートの横軸に沿って左端が抵抗0,右端が抵抗∞を表わします.
上半円側ではインダクタンスが大きくなるほど時計周りに,下半円側ではキャパシタンスが大きくなるほど反時計周りに動くことになります.スミス・チャートの中心は特性インピーダンスZ0=1(通常50Ω)にマッチングしていること(つまり反射が0であること)を表わします.
 それではここで,長さLの伝送線路を考えてみましょう.

 反射係数ρを極座標で表示すると,中心が反射0,外周が反射1になります.
  
ρ= (Z−1) / (Z+1)
   =|ρ| exp (−j2βLg) ・・・・・・・ 3)

 
β(線路位相定数)=360度/λ
  Lg:伝送線路長,λ:波長
 ここで,伝送線路長Lgを波長λの倍数で表わせば,わかりやすくなります.
この場合,インピーダンスを整合させるためには,入力インピーダンスと出力インピーダンスを単純に長さの分だけ,電源側へは右回りに,負荷側へは左回りに
まわすことになります.すなわちスミス・チャート上で,抵抗,インダクタンス,キャパシタンス,および伝送線路を用いてインピーダンス整合ができます.
 この時にも前述のように,Sパラメータは反射係数ρ,透過係数(1−ρ)で表わされます.例えば,極座標における

   S11(0.5,−120)

は,反射係数の大きさが0.5,位相角−120度に相当します.
高周波アナログ回路の基本概念について一通り理解できたら,さっそく,実際のアナログ回路設計に入りましょう.