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3.サンプル回路と設計フロー

 このチュートリアルで使うサンプル回路は,高周波バランスド・ミキサ回路です.ミキサ回路は,高周波キャリア信号(情報を載せて伝播するための高周波信号)に音声信号やデータ信号を載せたり,取り出したりするときに用います.古くはラジオ,テレビの受信回路に,最近では衛星通信や携帯電話,ページャなどの変復調回路に用いられています.

 一般に,ミキサ回路の構成は,以下の二つに分類されます.

  • ・二つまたはそれ以上の数の信号を掛け合わせる回路
        この回路は最近の移動体通信システムの変復調方式に利用されています.

  • ・ダイオードの非線形性を利用したダイレクト検波回路
     この回路は比較的簡単な振幅変復調および周波数変復調で用いられています.

複数のショットキー・ダイオード(金属-半導体接触障壁を利用した高速ダイオード)を使用します. このチュートリアルで取り上げる高周波ミキサ回路は,前者の掛け合わせ回路です. 図4は,高周波アナログ回路シュミレータを利用した設計フローの一例です.

まず,高周波の効果を意識せず,低周波と見なしてアナログ回路を設計し,低周波のアナログ回路シミュレーションを行います.次に,設計した回路を高周波に合わせて最適化し,高周波のアナログ回路シミュレーションを実施します.動作の複雑な高周波アナログ回路は,このような2段階の工程で開発します. なお,今回のチュートリアルで取り上げる高周波ミキサ回路は非常にシンプルな回路であるため,次章の演習では,図4のような2段階の工程ではなく,いきなり高周波アナログ回路シミュレーションを実施しています.