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5.高周波ギルバートセル・ミキサ回路

 4章で取り上げたミキサ回路は,あくまでも今回のチュートリアルの例題として利用するための,非常に基本的な回路です.変調効率に問題があるため,実際の設計ではあまり使われていません.そこで補足として,実際の携帯電話などの設計で利用されているギルバートセル・ミキサ回路について,簡単に紹介します.

 ギルバートセル・ミキサ回路は高周波信号を効率よく変復調するミキサ回路で す.消費電流や変換損失が低く,良好な出力波形特性を備えています.図20(a)に基本回路例を示します.出力電圧は以下の式で表わされます.

  V0(t)=RL/RE・V2(t) tanh( V1(t) / 2VT )   ・・・・・・・ 9)

 ここで,|V1(t)|>> VTの時,トランジスタQ1,Q4とQ2,Q3の導通が交互に生じます.そのため,回路は図 20(b)のようになります.従って,

  V0(t)=RL/RE・V2(t)・Sc(t)                  ・・・・・・・ 10)

となります.ここで,Sc(t)はV1(t)に比例したキャリア信号です.入力V2(t)で変調された出力信号V0(t)が得られることがわかります.

    V1=A sinω1t,V2=B

sin ω2tとすると,V0(t)はcos (ω1−ω2)t に比例した周波数成分を発生することがわかります.

 実際の携帯電話に用いる場合には,例えば1/4πQPSKの変調信号をジョンソン・カウンタで4分割し,I,Qそれぞれの信号にかけます.さらにIとQを加えてフィルタを通せば変調器を構成できます.復調器も同様の方法で構成できます.

こうした携帯電話のシステムについては,市販の参考書で詳しく述べられているので参照して下さい.